美容室の会計、利益を出すポイント

美容室は他の様々な業種のものと比べると、会計は比較的シンプルな構造になっています。

売上 100 カット・カラー・パーマ等の売上、物販売上
売上原価 10 カラー・パーマ等の材料費、物販の仕入
売上総利益 90
販管費 70 人件費、家賃、広告費、減価償却費など
営業利益 20
支払利息 5 利息部分のみ、元金返済は含まない
経常利益 15

会計は上記のような構造になっており、経常利益がプラスになっていれば一応「利益が出ている」状態といえます。
ただし、個人事業の場合はオーナーの給料は販管費に含まれていないため、それを含めて利益を出す必要があります。

では利益が出ていれば経営的に問題ないかというとそうでもありません。
会社が倒産するのは利益が出ていないからというのは直接の原因ではなく、資金がなくなったからというのが直接の原因です。
黒字倒産という言葉があるように、利益が出ていても会社が潰れることはあるのです。
つまり、経営においては、利益が出ているだけでは足りず、「資金(キャッシュフロー)においてもプラス」の状態であることが重要です。

キャッシュフロー=税引後利益(わかりやすく経常利益でもOK)+減価償却費△借入金返済(元本部分)

利益=キャッシュフローとなればわかりやすいのですが、実際は大きく異なることが多いです。また、現金の支払額がそのまま経費になればわかりやすいのですが、会計では少し異なります。美容師の方が理解しにくい点として2つあげてみます。

1つ目は減価償却費です。
店舗をオープンする際に数百万円単位で内装工事費がかかると思いますが、これは支払った年度で全額を経費にすることはできません。
会計は、売上と経費を対応させるという基本ルールがあり、内装工事した物件は今後何年にもわたり使用して売上に貢献するものですので、内装工事費は税法で定める耐用年数(例えば15年)で分割して毎年経費計上するということになります。この毎年経費計上されるものを減価償却費といいます。

2つ目は借入金の返済です。
例えば創業時に1,000万円借入をし、それを7年間で返済する場合、7年間で総額いくら払うかというと当たり前ですが1,000万円を超えます。
これは借りた金額(元金部分)の他に利息を付けて返済するからです。元金部分は毎月支払いがありますが会計上は経費にはならず、利息部分のみが経費になります。
たまに借入金の返済(元金部分)はなぜキャッシュアウトがあるのに経費にならないのですかと質問されますが、借りたお金(負債)を返すだけであり、借りたとき(キャッシュインのとき)に売上扱いにしていませんので、返すときにも当然経費扱いにはならないということです。

このように、利益が出ていれば良いかという視点だけでは足りず、キャッシュフローの面でもプラス(つまり毎年資金が増えていく状態)である必要があります。

税金についても少し触れておくと、個人事業の場合は毎年1月1日から12月31日までの期間について計算し、 翌年3月15日までに所得税と消費税を納付する必要があります。
それだけではなく、翌年5月頃に住民税の納付書が送られてきますし(6月、8月、10月、1月の4分割で納付)、 さらに事業税も翌年の8月と11月に納付することになります。
このように時間差で納付する税金がたくさんあるので、計画的に利益・資金を残しておかなければいけません。

また、近年は物価上昇や人件費上昇が顕著ですので、今後さらにコストが増えるという前提で余裕を持って経営していく必要があります。